ヨーロッパ系の人種では成人の乳糖不耐症の割合が10%〜20%程度と極めて低いのに対し、なぜ日本人をはじめとする東アジア人ではこれほど高いのでしょうか。その答えは、数千年にわたる食文化と遺伝子の進化の歴史にあります。
北欧や西欧の祖先は、寒冷で農作物が育ちにくい過酷な環境を生き延びるため、家畜の乳を貴重なエネルギー源として利用してきました。その過酷な淘汰圧の中で、「大人になってもラクターゼの分泌が止まらない遺伝子変異(乳糖耐性持続)」を獲得した個体が生き残り、子孫を増やしたとされています。
一方、日本の歴史を振り返ると、稲作を中心とする農耕と魚介類が食の根幹でした。飛鳥・奈良時代に「蘇(そ)」や「酪(らく)」と呼ばれる高級乳製品が貴族階級の薬や珍味として重宝された記録は残るものの、一般庶民が日常的に牛乳を口にする文化は定着しませんでした。日本人が日常的に牛乳を飲むようになったのは、明治時代の文明開化、そして本格的には戦後の学校給食導入以降のわずか数十年の話です。何千年も乳を飲まずに生きてきた日本人の遺伝子が、ここ半世紀あまりの急激な食の欧米化に追いついていないのが現実です。