『炎立つ』の重厚なドラマを決定づけたのは、当代きっての実力派俳優陣による鬼気迫る演技合戦です。
とりわけ絶賛されたのが、初代・藤原経清と四代目・藤原泰衡の二役を演じ分けた渡辺謙の存在感です。第1部ではみちのくの誇りに殉じる不屈の武将・経清を情熱的に演じ、第3部では時代の荒波に呑まれて懊悩する若き当主・泰衡を哀切たっぷりに表現。同じ顔でありながら全く異なる魂を吹き込み、物語の始点と終点を強固に結びつけました。
そして第2部の主役・藤原清衡を務めた村上弘明の演技も見逃せません。家族の愛憎と骨肉の争いの中で地獄を見つめ、血塗られた運命を乗り越えて平和への祈りへと昇華させる清衡の高潔さと悲哀を、圧巻の気品で演じ切りました。
脇を固める布陣も極めて豪華です。安倍頼時を重厚に演じた佐藤慶、長男・貞任を堂々と演じた里見浩太朗、冷徹な源頼義を怪演した中条きよし、そして清原一族の内紛で狂気と野心を剥き出しにした清原家衡役の豊川悦司の怪演は、今なおファンの語り草となっています。奥州藤原氏三代・秀衡役の渡瀬恒彦、源義経役の野村宏伸、源義家役の林隆三など、隅々まで隙のないキャスティングが劇世界の格調を高めています。