インターネット上の掲示板やレビューにおいて散見される「ジンギスカンは臭い」「冷凍肉は安かろう悪かろう」という言説には、大きな誤解と情報のアップデート不足が存在します。
まず羊肉の風味を決定づけるのは、飼育される羊の月齢と脂質に含まれる「分岐鎖脂肪酸(BCFA)」の濃度です。生後1年未満の「ラム」は脂肪酸の蓄積が少なく、特有の匂いはほとんど感じられません。一方、生後2年以上の「マトン」は羊本来の濃厚な旨味と香りを持ちますが、これも鮮度管理と丁寧な筋・脂のトリミング技術があれば、芳醇な肉の旨味へと昇華されます。「臭い」と感じる原因の9割は、不適切な温度管理によるドリップの流出と脂の酸化に起因しています。
さらに、かつて北海道の家庭で親しまれた円形の冷凍スライス肉「トラディショナルロール」を低品質と断ずるのは早計です。丸く成形して薄切りにしたロール肉は、適度な脂身と赤身のバランスが均一に設計されており、強火でサッと焼き上げてタレをたっぷり絡めることで、生ラムにはない独特の香ばしさとジャンクな旨味を生み出します。生ラムの繊細さを愛でるか、ロール肉の郷愁を味わうか、目的によって選ぶべき対象が異なる点こそが札幌ジンギスカンの奥深さです。