物語のクライマックスにおいて、多くの視聴者が固唾をのんで見守ったのが、主人公・榊晃次(豊川悦司)と水野紘子(常盤貴子)の恋の行方でした。幼少期の病気によって聴力を失った新進気鋭の画家・晃次と、アルバイトをしながら劇団で演技の練習に励む紘子。二人は純粋に惹かれ合いながらも、晃次の元婚約者である光(麻生祐未)の存在や、紘子の幼馴染である健一(岡田浩暉)の想い、そして「音のある世界とない世界」という目に見えない隔たりに幾度となく苦悩します。
第11話から最終話にかけて、二人の関係は決定的な局面を迎えます。お互いを想いすぎるあまりに生じる誤解と嫉妬。晃次への負担を気遣い、自分の未熟さに耐えかねた紘子は、ある悲しい出来事をきっかけに晃次の元を去り、故郷の仙台へと帰る決断を下します。駅のホームで紘子を引き止めようと必死に走る晃次と、走り出す列車の中から手話で「愛していると言ってくれ」と涙ながらに伝える紘子の姿は、ドラマ史に残る屈指の号泣シーンとして刻まれました。
そして物語は「3年後」へとスキップします。故郷で劇団の活動を続け、東京公演のために再び上京してきた紘子。かつて二人で過ごした思い出の場所である井の頭公園を訪れると、そこには懐かしいリンゴの木がありました。背伸びをして実を取ろうとする紘子の後ろから、そっと手を伸ばしてリンゴをもぎ取ったのは晃次でした。言葉や手話を交わすことなく、ただ見つめ合い、穏やかな笑顔を交わす二人。この結末は、形としての交際や結婚という枠組みを超え、生涯にわたって魂で結ばれた二人の普遍的な愛を象徴する幕切れとなりました。