境内の中心に堂々とそびえる宝城坊 薬師堂(重要文化財)は、寄棟造の重厚な茅葺き屋根が特徴的な関東有数の木造建築です。江戸時代前期の元禄年間に大改修された後、長年の風雨による傷みが進んでいましたが、平成22年(2010年)から約6年の歳月をかけた「平成の大修理」によって全解体修復が行われ、創建当時の壮麗なプロポーションを取り戻しました。
宝城坊が誇る最大の魅力は、薬師堂の奥にある宝物殿に集められた圧倒的な仏像群です。ここには国指定重要文化財を含む多数の仏像が安置されており、単一の寺院としては東日本随一の規模を誇ります。
中でも美術史・彫刻史の観点から極めて重要視されているのが、平安時代後期に作られた「鉈彫り(なたぼり)」の薬師如来像です。鉈彫りとは、丸鑿(まるのみ)の彫り跡をあえて表面に残し、木肌のリズムと素朴な躍動感を生かす東国独特の彫刻技法です。完成品でありながら粗削りのような力強さを湛えたその姿は、当時の東国武士や民衆の飾らない信仰心をリアルに物語っています。
さらに、本尊である薬師如来三尊像や、躍動感あふれる十二神将立像、阿弥陀如来坐像、四天王立像など、平安から鎌倉期にかけての名作が間近で拝観できる環境は、全国の仏像愛好家にとって至高の巡礼空間となっています。