公判の大きな焦点となったのが、遠藤裕喜の生い立ちと精神鑑定における責任能力の判断でした。
弁護側が提出した資料や法廷証言によると、遠藤は幼少期に両親の不和と離婚を経験し、父親による厳しい叱責やネグレクトに近い環境、家庭内での孤立感を深めながら育ちました。親族間を転々とする中で「誰からも無条件に愛された経験がない」という空虚感を募らせ、対人関係において相手にしがみつくか、極端に攻撃的になるパーソナリティの偏りが形成されていったとされます。
しかし、裁判員裁判において実施された複数の精神鑑定の結果、下された司法判断は極めて厳格なものでした。
- 精神疾患の否定:統合失調症や気分障害などの幻覚・妄想に支配された犯行ではなく、善悪の判断能力は明確に保たれていた。
- パーソナリティ障害の影響:自己愛性パーソナリティや愛着障害の傾向は認められるものの、犯行の周到な計画性や隠滅工作を鑑みれば、行動制御能力を著しく喪失していたとは言えない。
- 完全責任能力の認定:甲府地裁は「生い立ちへの同情の余地はあるが、動機は極めて身勝手であり、刑事責任能力を減軽すべき理由にはならない」と断定しました。