なぜ光はここまで強烈に代謝を狂わせるのか。その鍵を握るのが、松果体から分泌される睡眠ホルモン「メラトニン」と、約24時間周期の生体時計である概日リズム(サーカディアンリズム)だ。
オレキシン発見などで睡眠医科学を牽引する柳沢正史教授らをはじめとする専門家たちも、概日リズムの同調機構における光の決定的重要性を繰り返し指摘している。人間の網膜には、視覚を司る錐体・桿体細胞とは別に、光の波長と強度を感知する内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)が存在する。この細胞がブルーライトを含む波長を捉えると、脳の視交叉上核にシグナルが送られ、メラトニンの産生が瞬時にストップする。
日本睡眠学会が発信する各種知見でも示されている通り、メラトニンは単に眠気を誘うだけの物質ではない。強力な抗酸化作用を持ち、細胞修復や免疫機能の維持、血圧や体温の低下を促す極めて重要な生体防御ホルモンだ。電気を消さずに眠る夜は、メラトニンの夜間ピークが平坦化し、全身の臓器に散らばる末梢体内時計と中枢時計のあいだに致命的なズレが生じてしまう。