あの出来事が20年近く語り継がれる最大の理由は、悪意や計算が1ミリも存在しなかった点にある。彼女はふざけていたわけではない。至って真剣に、子どもたちへ愛を届けるためにペンを握っていた。その無垢な情熱と出力された造形物の間にある圧倒的な落差こそが、世間を激震させた真相だ。
カメラが引いた瞬間、隣の今井ゆうぞうは異変を察知し、懸命に笑いを押し殺しながら震えていた。プロフェッショナルとしての自制心と、目の前の視覚的狂気との間で繰り広げられた格闘。あの数秒間の沈黙と吹き出しそうな表情のコントラストが、事態を完全なるエンターテインメントへと昇華させた。
描いた本人は至って真顔で「スプーだよ」と言い放つ。この純粋無垢な狂気こそ、視聴者が腹を抱えて転げ回った理由だ。子どもを泣かせ、大人を笑い死にさせた怪作は、テレビというメディアが偶然捉えた最もピュアなハプニングだった。