一方、知の領域から日本中を歓喜させたのが、京都大学の山中伸弥教授によるノーベル生理学・医学賞の受賞と、それに伴う「iPS細胞」のトップテン入りだ。難病治療や再生医療の扉を劇的に押し広げるこの万能細胞の発見は、停滞感に喘いでいた日本の科学技術界にまばゆい光を投げかけた。
山中氏の誠実な語り口、マラソンで研究資金を募るひたむきな姿は、学問の象牙の塔と市民社会を一気に近づけた。単なる専門用語だったはずの四文字が、誰もが知る「希望の代名詞」へと昇華した瞬間だった。このとき蒔かれた知的な種は、十数年を経た現在もなお、世界中の医療現場で実を結び続けている。