ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「久しぶりに『八つ墓村』の映画を見返したら、最後までスケキヨが出てこなくて混乱した」「すけきよって八つ墓村と犬神家のどっちの映画だっけ?」という声が毎月のように投稿されています。白黒はっきりさせると、すけきよ(犬神佐清)が登場する映画は100%『犬神家の一族』です。
横溝正史の推理小説において、この2作は舞台設定も事件の動機もまったく異なる独立した長編です。しかし、世間の記憶の中では、両作のあまりにも強烈なビジュアルがパズルのピースのように合体してしまっています。
多くの人が脳内で「八つ墓村のシーン」として誤変換しているのが、以下の2大ビジュアルです。
1つ目は、犬神家の一族の佐清(白マスク)の姿。戦争で顔に大火傷を負い、素顔を隠すために母・松子が作らせた異様なゴム製マスク姿は、一度見たらトラウマになるほどのインパクトを残しました。さらに、真冬の青木湖の氷水から2本の足がV字型に突き出る犬神家の一族の湖の逆さ足のシーンも、完全に『犬神家の一族』の描写です。
一方、映画『八つ墓村』を象徴する真の怪異ビジュアルは、頭にハチマキで2本の懐中電灯を角のように固定し、白絣の着物にゲートル姿で日本刀と猟銃を手に村人を惨殺していく「多治見要蔵」の狂気です。さらに、劇中で老婆(濃茶の尼)が叫ぶ八つ墓村の「祟りじゃ〜っ!八つ墓の祟りじゃ〜っ!」というセリフもまた、日本映画史に刻まれた名フレーズです。
つまり、「白マスク=犬神家の一族」「頭の懐中電灯と祟りじゃ=八つ墓村」というのが、揺るぎない事実の境界線です。