ミュゲの最大の特徴は、甘美さと爽快感が絶妙に調和した「グリーンフローラル」の軽やかなトーンにあります。百合のようなパウダリーな重たさがなく、青葉を思わせるみずみずしいトップノートから、やがて洗い立てのリネンや高級石鹸を想起させる柔らかな清潔感へと移ろいます。
香水愛好家のみならず、普段あまりフレグランスをつけない層にも心地よく受け入れられるのは、この「圧倒的な清潔感」があるからです。周囲に威圧感や不快感を与えず、すれ違った瞬間に「清潔で育ちの良い人」という印象を自然に植え付ける力を持っています。
実は、すずらんの花は熱や溶剤に極めて弱く、生花から香気成分を効率的に抽出することが物理的に不可能とされてきた歴史があります。そのため、調香師(パフューマー)たちは長年にわたり、合成香料やヘッドスペース法(生花の周囲の気体を採取して分析する技術)を駆使してミュゲの香りを再構築してきました。現代のミュゲノートは、人類の高度な調香技術の結晶そのものといえます。