加瀬亮の父親は、大手総合商社「双日株式会社」で代表取締役社長および会長を歴任した加瀬豊氏である。豊氏は名門・日商岩井の出身であり、長年にわたり海外市場の開拓や大型プロジェクトの舵取りを担ってきた日本財界の重鎮だ。加瀬が生まれて間もなく渡米し、約7年間に及ぶアメリカ生活を送ったのも、豊氏の海外駐在に伴うものだった。
帰国後も裕福な環境で育ち、絵に描いたようなエリートコースを歩んでいた加瀬家。当然ながら、父をはじめとする周囲は、長男である加瀬亮にもビジネスの世界や法曹界など、安定した将来を期待していた。しかし、息子の心に芽生えたのは、企業戦士としての道ではなく、人間の生々しい感情を表現する演技の世界だった。