時計の針をあの伝説の朝に戻そう。日本放送協会(NHK)の情報番組『あさイチ』の生放送中、料理愛好家の平野レミが披露したのが「まるごとブロッコリー」だった。小房に切り分けるという常識を真っ向から否定し、株ごと茹で上げて皿の上に直立させ、特製ソースをとろりとかける――はずだった。
しかし、ソースをまとったブロッコリーは重力に耐えきれず、生放送のカメラの前で無残にもバタリと倒壊した。画面越しに響くスタッフのどよめき。だが、平野レミは動じなかった。「倒れちゃった!でも味は一緒だから!」と叫び、そのまま何事もなかったかのように進行を続けたのだ。
物理的な真相は明白だ。加熱によって茎の組織が軟化していたこと、頭部にたっぷりと水分と熱を帯びていたこと、そして粘度のある温かいソースが潤滑油として働いてしまったことが重なった結果である。しかし、この「完璧な失敗」こそが、視聴者の心を鷲掴みにした最大の要因だった。