この銭湯の名を全国区に押し上げた契機の一つが、映像メディアによる丁寧な描写だった。漫画家・エッセイストの久住昌之が手がけたエッセイを原案とするテレビ東京のドラマ『昼の銭湯酒』。その舞台として登場したことで、浴場が持つ独特の情緒が広く知られるようになった。
現在でもNetflixやU-NEXTといった配信サービスで作品が視聴され続けており、国内外の映像ファンが聖地として足を運ぶ姿が絶えない。ただの観光地化ではない。作品が切り取ったのは、飾らない日常の贅沢と、湯上がりの渇いた喉に流し込む一杯のビールの幸福感だった。ライフスタイル・紀行ドキュメンタリーが注目される昨今、作為のないリアルな空間が放つ説得力こそが、国境や世代を超えて人々を惹きつけている。