ファンの間で幾度となく議論されてきたのが「進撃の巨人 ループ説」です。「エレンは何度も世界線をやり直しているのではないか」「ゲームのように別ルートが存在するのではないか」という考察がネット上で拡散されました。しかし、作中のロジックを検証すると、これは一般的なループものとは明確に異なることが分かります。
「ループ」ではなく「決定論的宇宙(Bootstrap Paradox)」
『進撃の巨人』の世界構造は、過去に戻って選択を変えるタイムリープではありません。「過去、現在、未来が同時に存在する閉じた因果の輪(決定論)」です。エレンは道の中で「過去も現在も未来も同時に存在する」と吐露しています。
第1話冒頭でエレンが涙を流して目覚めた夢は、最終局面でミカサが放った「いってらっしゃい、エレン」という最期の記憶が、始祖の力を介して過去の幼少期エレンへとフィードバックされた結果です。過去を変える余地はなく、自由を求めて足掻くエレンのすべての選択が、最初から「この破滅的な結末」へ至る一本のレールとして組み込まれていました。したがって、いわゆる「世界線をやり直すループ説」は誤解であり、正しくは「逃れられない確定された運命」を描いた悲劇と言えます。
アニメ版完結編で諫山創氏が改訂した「決定的な対話」
進撃の巨人 原作とアニメの違いにおいて、最大にして最も意義深い改変は、道の中におけるエレンとアルミンのラストの会話です。原作コミックス最終話では、アルミンがエレンに対して「僕たちのために虐殺者になってくれて…ありがとう」と述べるくだりがあり、これが一部で「虐殺の肯定ではないか」と議論を呼びました。
これに対し、アニメ版(『進撃の巨人 The Final Season 完結編 後編』)では、原作者・諫山創氏自身の強い要望によりシナリオが大幅にブラッシュアップされました。エレンは「俺はどこにでもいる、ありふれた馬鹿だった。だからこんな結末しか選べなかった」と自身の精神的限界を率直に告白。アルミンもまた、「壁の外の世界に夢を見せてエレンの背中を押したのは自分だ」としてその罪を共有し、「地獄で一緒にいよう」と抱き合います。加害の責任を美化せず、共犯関係としての痛切なドラマへと昇華されたこの演出は、国内外で絶賛を受けました。