頭部外傷の診察において、臨床現場の医師が最も慎重になるのが「乳幼児・小児」と「高齢者」です。この2つの層は、成人と比較して生体構造やリスク要因が根本的に異なります。
1. 子ども(乳幼児・小児)が頭を打った場合の判断基準
乳幼児は頭蓋骨が柔らかく、頭部の比重が大きいため転倒時に頭を打ちやすい特徴があります。受傷直後に大声で泣き、その後あやして泣き止み、普段通り母乳やミルクを飲んで機嫌よく遊んでいる場合は、緊急性が低いケースが大半です。
しかし、小児頭部外傷臨床判断ルール(PECARN基準など)に基づき、以下の兆候がある場合は即座に医療機関(小児科または脳神経外科)を受診してください。
- 受傷後に2回以上吐いた
- 目線が合わない、あやしても笑わない、ぼんやりしている
- たんこぶがブヨブヨと異常に大きく柔らかい(帽状腱膜下血腫や骨折の疑い)
- 高所(1メートル以上、または子どもの身長以上)からの転落
2. 高齢者が頭を打った場合の落とし穴|慢性硬膜下血腫の恐怖
高齢者の頭部打撲で最も警戒すべき疾患が慢性硬膜下血腫です。加齢によって脳が萎縮すると、頭蓋骨と脳の間に隙間ができ、脳表面をつなぐ微小な静脈が引っ張られて切れやすくなります。打撲の衝撃自体は軽くても、ごくわずかな出血が数週間から数カ月かけてジワジワと溜まり、脳を圧迫し始めます。
高齢者の慢性硬膜下血腫で見られる代表的な症状は以下の通りです。
- 歩行時に足を引きずる、すり足になる、よくつまずく
- 急に物忘れがひどくなる、意欲が低下しボーッとする(認知症と誤認されやすい)
- 尿失禁をしてしまう
- 片側の手足に力が入らない、箸をうまく使えない
特に心疾患や脳梗塞の治療で抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用している高齢者は、出血が止まりにくく重症化しやすいため、軽く頭をぶつけただけでも必ず病院で医師の診察を受けておくことが不可欠です。