寺島しのぶのルーツを辿る上で、避けて通れないのが両親の存在だ。父は人間国宝であり、歌舞伎界の重鎮である七代目尾上菊五郎。そして母は、昭和の映画界を席巻し、今なお圧倒的なオーラを放つ女優の富司純子である。この二人の結婚は、当時「梨園と映画界のビッグカップル」として日本中を沸かせた。
幼い頃から楽屋裏の空気を吸って育った彼女にとって、芝居は息をするのと同じことだった。しかし、女性であるというだけで歌舞伎の舞台に立つことは許されない。その葛藤が、彼女を映画や現代劇の道へと突き動かす原動力となったのは有名な話だ。伝統の重圧と、そこから飛び出そうとする情熱。そのせめぎ合いこそが、彼女の演技の骨格を作った。