日本や英語圏では「蝶(Butterfly)」と「蛾(Moth)」を明確に呼び分ける文化が定着しているが、一歩海外に目を向けると、この二項対立自体が存在しない言語圏も少なくない。
代表的なのがフランス語だ。フランス語では蝶を「パピヨン(papillon)」と呼ぶが、蛾のことは「パピヨン・ド・ニュイ(papillon de nuit=夜のパピヨン)」と呼ぶ。つまり、言葉の成り立ち自体が「昼の蝶」と「夜の蝶」という対比構造になっており、根本的には同じ虫の仲間として捉えているのだ。同様に、ドイツ語の古語や一部の地域方言、あるいは南米の先住民族の言語などでも、両者を一つの包括的な単語で表現する例が多数見られる。
「蝶は美しく気品があり、蛾は不気味で汚らわしい」という二元論的なイメージは、生物学的な根拠に基づいたものではなく、人間の文化や言語が後天的に作り上げた認知のフィルターに過ぎないことがよく分かる。