現在のリビアは、トリポリを拠点とする暫定政府と、東部トブルクを拠点とする勢力に分裂したままだ。無数の民兵組織が乱立し、それぞれが独自の利権を主張して銃撃戦を繰り返す。かつての強権体制が消えた後に訪れたのは、民主主義ではなく、暴力が支配する無秩序だった。
「カダフィの時代は、ルールさえ守っていれば命の危険はなかった。今は、誰のルールに従えばいいのかさえ分からない」。トリポリで商店を営む男性は、匿名を条件にそう語った。インフラは老朽化し、かつて無料だった医療サービスは崩壊。皮肉にも、独裁政権の崩壊が国民から基本的な生活の安全を奪い去る結果となっている。