2026年現在、東京の墨田区鳩の街や、荒川区三ノ輪といったかつての赤線地帯は、激しいジェントリフィケーションの波に洗われている。木造家屋が密集するこれらのエリアは、防災上の観点から優先的に解体対象となっている。カフェー建築と呼ばれる、西洋風のモダンなデザインを取り入れた建物も、今や数えるほどしか残っていない。
建築史家や地域住民の間では、これらを「負の遺産」として保存すべきか、それとも治安や景観のために解体すべきかという議論が絶えない。歴史を消し去ることは容易だが、一度壊した文化的な痕跡は二度と戻らない。保存活動に取り組む市民団体は、建物のデジタルアーカイブ化を進めるなど、記憶を未来に繋ぐための模索を続けている。