戦前の日本は本当に暗黒期か?庶民の暮らしと経済の実態を徹底解明の具体的な内容に迫る! わかりやすい言葉で紐解きます。
詳細を見る情緒的なノスタルジーに偏ることなく実態を把握するためには、客観的な統計データを検証する必要があります。当時の内閣統計局資料や日本銀行の金融統計をもとに、昭和初期(1930年代前半)と現代の社会基盤を比較したのが以下のデータです。
項目戦前・昭和初期(1930〜1935年)現代の基準・数値指標編集部の分析・評価総人口推移約6,445万人〜6,925万人(内地)約1億2,400万人(減少局面)急激な人口増加期にあり、若年層の割合が極めて高いピラミッド型を形成。平均寿命男性 44.8歳 / 女性 46.5歳(第5回生命表)男性 約81歳 / 女性 約87歳乳幼児死亡率や結核などの感染症罹患率が高く、統計上の平均値を大きく引き下げていた。エンゲル係数約35%〜45%(都市勤労者世帯)約26%〜28%家計に占める食費の負担は重かったが、大正期よりは改善傾向にあった。高等教育進学率約3%〜5%(旧制高校・大学・専門学校)約60%以上(大学・短大進学率)初等教育の就学率は99%超だったが、高等教育は極めて狭き門のエリート層限定。産業構造(就業者比率)第1次産業(農業・林業等)が約45〜49%第3次産業(サービス等)が約70%以上国民の約半数が農業に従事しており、天候や農産物価格の変動が社会全体を直撃。
データが物語るのは、圧倒的な若さと成長エネルギーを宿しながらも、公衆衛生やセーフティネットの未整備という脆弱性を抱えていた社会の姿です。とくに1929年の世界恐慌に端を発する「昭和恐慌」では、生糸の対米輸出急減や米価の暴落によって東北地方を中心とする農村部が壊滅的な打撃を受けました。華やかな都市文化のすぐ隣に、極限の困窮が存在していたのが戦前日本の経済状況における最大の構造的矛盾でした。