SNSの普及によって常時他者と接続されながらも、皮肉なことに内面的な孤立感や承認欲求の飢餓感に苦しむ人が急増しています。メンタルヘルスや人間関係の悩みが多様化する中で、瀬戸内寂聴さんの言葉が再評価されている背景には、現代特有の閉塞感があります。
多くの自己啓発書やポジティブ思考の言説は「前を向くこと」や「正しくあること」を求めがちです。しかし、寂聴さんのスタンスは根本から異なります。彼女自身、戦時中の結婚、泥沼の不倫、幼子を残しての出奔、そして51歳での得度(出家)という、社会的な規範から大きく逸脱した波乱万丈な経歴を背負っていました。自身が地獄のような業(ごう)や後悔を味わい尽くしたからこそ、「人間は愚かで、間違いを犯すもの」という冷徹なリアリズムと、そこから生まれる深い慈悲が言葉の端々に宿っています。
当時の特番インタビューや自著・手記で語られた「人間は生まれてくるときも死ぬときも一人。孤独を恐れるからおかしくなる」という生の告白は、綺麗事ではないからこそ、孤独に苛まれる人々の心の防壁をスッと溶かしていくのです。