立木氏のキャリアを語る上で欠かせないのが、アニメの登場人物という枠を超えた「声のブランド化」です。その最たる例が、2009年放送の特撮ドラマ『仮面ライダーW』におけるガイアメモリのシステム音声です。
「サイクロン!」「ジョーカー!」といったアイテム名を読み上げる際、ソウルフルで粘り気のある独特の節回しを取り入れたことで、変身シークエンスそのものがエンターテインメントへと昇華されました。このアプローチは大ヒットを記録し、後の特撮シリーズにおける「アイテム音声のキャラクター化」という一大潮流を決定づける契機となりました。
また、TVアニメ『逆境無頼カイジ』におけるナレーションも伝説的です。極限状態に追い詰められた登場人物たちの心理戦を、畳みかけるようなアジテーションと独特の抑揚で語り倒すスタイルは、原作が持つ「ざわ…ざわ…」とした狂気を映像作品として完璧に補完しました。『世界の果てまでイッテQ!』などのバラエティ番組でも、時に出演者を突き放し、時に温かく煽るナレーションでお茶の間に親しまれており、まさに「立木文彦の声が流れるだけで番組の格が一段上がる」と言わしめるほどの信頼を獲得しています。