ミケ・ザカリアスの最期が描かれたのは、原作コミックス第9巻収録の第35話「獣の巨人」、そしてTVアニメ版ではSeason 2の第1話(通算第26話)「獣の巨人」です。ウォール・ローゼ突破の報を受け、南区に住む民間人の避難時間を稼ぐため、ミケは104期生たちを逃がしながら自ら単独で殿(しんがり)を引き受けました。
通常であれば生還すら絶望視される平原での遅滞戦術において、ミケは圧倒的な機動力を発揮し、周囲の巨人を瞬く間に5体討伐します。しかし、突如として暗がりから姿を現した全身毛むくじゃらの「獣の巨人」により、戦況は悪夢へと反転しました。獣の巨人はミケの乗る馬を片手で軽々と掴み上げ、投擲によって正確に投げつけてきたのです。搭乗馬を失い、屋根から地面へと転落したミケは、負傷した状態で小型の巨人に捕らえられそうになります。
人類側にとって最大の衝撃だったのは、獣の巨人が発した「その武器は何ていうの? 腰につけた、飛び回るやつ」という人間の言葉でした。人語を操り、冷静に観察眼を働かせる未知の存在を前に、歴戦の猛者であるミケすら戦慄し、金縛りのような硬直状態に陥ります。立体機動装置を強奪され、無防備となったミケに対し、獣の巨人は無関心に「もう動いていいよ」と周囲の無知性巨人たちに指示を下しました。
恐怖で震え上がりながらも、ミケはかつて部下に告げた自らの哲学「人は戦うことをやめた時、初めて敗北する。戦い続ける限り、まだ負けていない」を脳裏で反芻し、落ちていた刃を手に立ち上がろうとします。しかし、次の瞬間に複数の巨人が一斉に彼の四肢と体に生きたまま喰らいつきました。鋭利な牙で肉を引き裂かれ、内臓を貪られる激痛の中、誇り高き分隊長の口から漏れ出たのは「やめてええええ!」「嫌だあああ!」という、あまりにも生々しい人間としての断末魔でした。