2000年代初頭のヒトゲノム計画の完了によって、人類は自らの設計図をすべて読み解いたかのように思われた。だが、実際の生命現象ははるかに複雑で流動的だ。遺伝子の塩基配列そのものは変化しなくても、環境負荷や生活様式によって遺伝子のスイッチがON/OFFされる現象が確認されている。
科学ドキュメンタリーなどで紹介される最新の症例では、祖父母世代が経験した極度の飢餓や強いストレスが、分子レベルの記憶としてDNAに刻まれ、孫の代の代謝機能や精神的傾向に影響を与える例が報告されている。隔世遺伝は、単なる骨格や目元の類似にとどまらず、体質や潜在的なリスクにまで及んでいるのだ。