高茶屋駅(JR東海)の無人改札を出て、線路沿いの小道を数分歩く。乾いた踏切の警報音が遠くに響く中、煤けたトタン屋根と色褪せた看板が見えてくる。一見するとどこにでもある昔ながらの大衆食堂だが、昼時になると作業着姿の常連客からスーツ姿の営業パーソン、さらには県外ナンバーの車までが次々と吸い寄せられていく。
高度経済成長期から地域の食を支えてきたこの界隈の食堂は、時代の移り変わりとともに店舗数を減らしてきた。しかし近年、飾らない本物の味を求める若者やカルチャー層が流入し、店内には独特の活気が満ちている。ステンレスのカウンター、手書きの短冊メニュー、冷水機から注ぐ紙コップの水。そのすべてが、効率化を極めた現代のフードシーンに対するアンチテーゼのようにすら感じられる。