メディア・エンターテインメント業界における当事者表象の成熟も、理解促進に決定的な役割を果たした。かつてのフィクションにおいて、恋愛や性に無関心なキャラクターは「冷酷な悪役」や「感情が欠落したロボット」、あるいは「愛を知って変わるべき未熟者」として描かれることがほとんどだった。
風向きを劇的に変えた先駆的作品が、Netflixで配信されたアニメ『ボージャック・ホースマン』だ。主要キャラクターのトッド・チャベスが自身のアセクシュアリティを受け入れ、コミュニティを見つけていくプロセスは、欧米のポップカルチャーに多大なインパクトを与えた。
日本国内では、高橋一生と岸井ゆきのが主演を務めたドラマ『恋せぬふたり』が画期的な金字塔を打ち立てた。他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない二人が「家族」のあり方を模索するこの作品は、従来の枠組みを覆すLGBTQ+ヒューマンドラマとして社会現象を巻き起こした。NHKプラスなどを通じた見逃し配信でも記録的な反響を呼び、アセクシュアル/アロマンティックという言葉がお茶の間の会話に自然と溶け込む契機となった。