デビュー作の鮮烈な成功に安住しないのが、彼女の真骨頂だ。続く長編『ちぎれたドミノ』では、密室殺人と連鎖する悲劇を驚異的なスピード感で描き切り、ミステリファンの期待を軽々と超えてみせた。ドミノ倒しのように崩れゆく日常と、張り巡らされた誤導の罠。読者が張り巡らせた推理の網を、鮮やかにすり抜けていく。
さらに読書界を驚かせたのが『駄犬道中おかげ参り』である。江戸時代を舞台に、主人の代わりに伊勢参りへ向かう犬と、その旅路に巻き込まれる人々を描いた異色のロードノベル。歴史の情緒と軽妙な語り口、そして根底に流れる謎解きのスリル。ジャンルの枠組みを軽々と飛び越えるその筆致は、作家としての底知れない器の大きさを証明している。