どれほど巨万の富を築こうとも、六麓荘町に家を建てるハードルは極めて高い。資金力さえあればタワーマンションのペントハウスを購入できる都心の高級エリアとは、根本的に仕組みが異なるからだ。その最大の関門となっているのが、六麓荘町町内会による独自の慣習とコミュニティの目利きである。
この地域に新しく土地を購入して家を建てる際、買い手は町内会へ挨拶に出向き、地域の調和を乱さない人物であるかどうかの見極めを受ける。高額な入会金や年会費の納入が求められるだけでなく、深夜の騒音を出さないか、街の美観とプライバシーを尊重できるかといった「住まい手としての品格」が厳密に問われる。かつて一世を風靡した新興IT長者や派手なインフルエンサーがこの地への移住を敬遠し、結果として東京の港区や渋谷区を選ぶ背景には、こうした富裕層コミュニティ特有の厳格なスクリーニングが存在する。