原作者である大久保篤の手腕が光る部分は、まさにこのトラウマと救済の描き方にある。従来の少年漫画であれば、主人公側の「正義」や「優しさ」によって救われるのが王道だろう。しかし本作では、社会の闇や狂気を抱えたダークファンタジーとしての独自性が遺憾なく発揮されている。
講談社「週刊少年マガジン」での連載当時から、大久保作品が一貫して描いてきたのは、ポップな絵柄の裏に潜む人間の精神的な脆さと社会構造の不条理だ。ナタク孫というキャラクターは、大人が勝手に押し付ける理想やエゴに潰されかける現代社会の子供たちの暗喩でもあり、その救済が正当な倫理観を持つヒーローではなく、異常者の黒野によって果たされるという逆説的なロジックは、多くの読者に強烈な衝撃を与えた。