結論から明かすと、糸守町という自治体は実在しません。劇中の設定では「岐阜県飛騨地方」に位置する山深くの町とされていますが、地図上に糸守町という地名は存在しない架空の町です。
それにもかかわらず、なぜこれほど多くの人々が実在を信じるほど強いリアリティを感じるのでしょうか。その理由は、新海誠監督が日本各地の実在する風景や神社、伝統文化を緻密に取材し、ひとつの町として再構築したハイブリッドな舞台設定にあります。
三葉たちが話す柔らかな飛騨弁の響き、古くから伝わる伝統工芸「組紐(くみひも)」の手仕事、山深い盆地特有の生活感など、細部に宿る圧倒的な描写力が架空の町に息づく命を吹き込んでいます。