「アイーン」というポーズは、最初から完成された決め台詞として計算し尽くされて作られたわけではなかった。そのルーツは、志村けんが舞台や番組の試行錯誤の中で生み出した、些細なリアクションの積み重ねにある。志村本人の回想や周囲の証言によれば、相手のツッコミに対して怒りや威嚇を表現する動作が徐々にエスカレートし、あの独特の顔の歪みと「アイーン」という濁音混じりの発声へと昇華していったという。
特に『志村けんのバカ殿様』のコントにおいて、家臣やゲストとの掛け合いの中で見せる「怒りのポーズ」として定着したことが決定打となった。所属事務所であるイザワオフィスでの番組制作過程においても、志村は一瞬の間の取り方や手の角度、顎の角度にミリ単位のこだわりを見せていたとされる。かつて盟友である加藤茶と切磋琢磨しながら磨き上げた身体表現の技術が、あの数秒間のポーズに濃密に凝縮されているのだ。