この「目の恐怖」を極限まで計算し尽くして表現してきたのが、世界的な映画産業だ。中でも、ワーナー・ブラザースが制作した金字塔的サイコロジカルホラー『シャイニング』は、映画史に残る「怖い目」の演出を見せてくれた。天才監督スタンリー・キューブリックは、主演のジャック・ニコルソンに対し、頭を低く下げながら上目遣いでカメラを睨みつける独自の視線技法を徹底指導した。これこそが、観客の無意識に恐怖を植え付ける演出の真骨頂だった。
また、『羊たちの沈黙』におけるアンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクター博士も同様だ。彼は作中でほとんどまばたきをしない。逃げ場のない不気味さと知的な狂気を目元だけで表現し、スクリーン越しに観客を完璧に支配してみせた。