交際が公になった当初、夏木マリさんは婚姻届を提出しない「フランス婚(事実婚)」を宣言していました。ヨーロッパのように形式的な契約にとらわれず、愛と信頼関係だけで結ばれる自由なパートナーシップは、当時の日本でも大きな話題を呼びました。
「籍を入れるという形式にこだわらなくても、心が繋がっていればいい」と語っていた二人が、なぜ夏木マリさんが59歳になった2011年5月に入籍を決意したのでしょうか。その背景には、大きな価値観の転換がありました。
最大の契機となったのは、2011年3月に発生した東日本大震災です。未曾有の災害を目の当たりにし、人の命の儚さや家族の絆を痛感した夏木さんは、「もし何かあったとき、法的な配偶者でなければ病院で面会すらできないかもしれない」という現実的な問題に直面しました。
さらに夏木さんは後に、「一度くらい結婚という制度を経験してみてもいいかな」「『旦那です』と胸を張って言えるのも悪くない」とユーモアを交えて語っています。制度への反発ではなく、互いを守り抜くための覚悟として選択した59歳での結婚は、多くの大人世代に勇気と共感を与えました。