国際社会の安全保障観を激変させたのが、2026年以降のロシアによるウクライナ侵略です。この軍事侵攻から得られたウクライナ情勢の教訓は、核戦略の現場において極めて冷徹な現実を突きつけました。
1994年、ウクライナは「ブダペスト覚書」に署名し、旧ソ連から引き継いだ世界第3位の核兵器保有規模(弾頭約1,900発)を放棄しました。その見返りとして米英露がウクライナの主権と国境の不可侵を約束したものの、条約としての法的拘束力や自動的な軍事介入義務は盛り込まれていませんでした。結果として、核を手放した国家が核保有大国から軍事侵略を受けるという事態が生じ、防衛専門家の間では「自前の核抑止力を持たない国の脆さ」が再認識されることになりました。
同時に浮き彫りとなったのが、核保有国が侵略を行う際に核戦力を「盾」として使い、他国からの直接軍事介入を阻む「逆抑止(Negative Deterrence)」の脅威です。ロシアが核兵器の使用示唆を繰り返したことで、NATO諸国は直接の部隊派遣を避け、通常兵器の供与に留まりました。
こうした動向は、米国と同盟を結ぶ国々における核の傘のメリットとデメリットの再点検へと直結しています。平時における最大のメリットは、自国で核を持たずに済む外交的正当性と経済的効率性です。一方で、「敵国が米本土を直接攻撃できる核能力を持つ場合、同盟国のために米大統領が自国都市を危険に晒してまで報復核を行使してくれるのか」という「拡大抑止の信憑性」に対する疑念は常に付きまといます。これを受け、日米間や米韓間では協議メカニズムの格上げなど、拡大抑止の最新動向として核運用の透明性とコミットメントを可視化する試みが進められています。