あらゆる手段を尽くし、文壇の階段を上り詰めた真下怜。物語のクライマックスにおいて、彼女はついに悲願であった最高峰の文学賞を射止めます。しかし、その結末に待っていたのは、安らかな幸福や達成感ではありませんでした。
賞を手に入れた瞬間から、かつて味方だった者たちは離れ、周囲には嫉妬と猜疑心が渦巻きます。自らが利用し、切り捨ててきた人々への代償を払いながら、怜は「賞を取った作家」として常に次作の成功を義務づけられる、さらに過酷な荒野へと放り出されることになります。
ラストシーンで描かれる怜の姿は、決して破滅した哀れな敗者ではありません。どれほど泥水をすすり、魂を汚そうとも、自分には「書くこと」しか残されていないと悟り、再びペンを握る怜の眼差しには、凄惨なまでの凄みが宿っています。栄光の象徴である「プライズ」とは、救済ではなく永遠に続く創作の苦しみへの招待状に過ぎないという、文学の残酷な真理を突きつける結末となっています。