話は江戸時代末期、天保年間まで遡る。伊勢神宮に次ぐ格式を誇る熱田神宮へ参拝に訪れる旅人たちは、長い道中で蓄積した長旅の疲れを癒やし、神前に進む前に心身を清める必要があった。そのために設けられたのが「きよめ茶屋」である。
茶屋で出された出来立ての餅は、瞬く間に評判を呼んだ。羽二重餅に捺された「きよめ」の印は、単なる商標ではなく、神聖な地に入るための「証」でもあったのだ。200年近くの時を経た現在も、その精神性は一切ブレていない。時代の波に洗われながらも、神社の歴史とともに歩んできた重みが、一つひとつの餅に確かに宿っている。