SNSやネット掲示板を中心に定期的に過熱するのが、「佐川急便がついに再配達を有料化するのではないか」「再配達1回につき数百円の手数料が徴収される」という言説です。ECの普及に伴い配送現場の疲弊が社会問題化する中、この噂に信憑性を感じる消費者は少なくありません。
断言しますが、2026年現在において、佐川急便が個人の再配達を有料化したという事実は一切ありません。何度再配達を依頼しても、受取人が追加料金を請求されることは現行ルール上存在しないのです。
では、なぜこのような噂が既成事実のように拡散したのでしょうか。発端は、国土交通省や経済産業省の物流有識者検討会において、「再配達率の削減に向けた経済的インセンティブの導入(再配達有料化の法的可否)」が議論の俎上に載せられた過去の経緯にあります。欧米の一部物流企業が導入している不在ペナルティ料金の事例や、運賃改定のニュースがネット上でセンセーショナルに切り取られ、「大手キャリアが即座に有料化に踏み切る」という誤認を生み出しました。
ただし、現場が無傷のままサービスを維持できているわけではありません。ドライバーの時間外労働に年間960時間の上限が課された「物流の2026年問題」を経て、2026年の物流インフラはかつてない人員効率化のプレッシャーに晒されています。有料化という直接的なペナルティこそ回避されているものの、各社は「再配達そのものを発生させない仕組み」へ急激に舵を切っています。
佐川急便を傘下に持つSGホールディングスも、スマートクラブを通じた事前通知の強化、置き配指定サービスの対応拡大、駅や商業施設に設置されたオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」との連携強化を猛烈なスピードで推し進めています。「再配達は無料だから何度頼んでも構わない」という過去の常識は、ドライバーの労働力という有限のリソースによって辛うじて支えられているのが紛れもない実態です。