ネット上の掲示板やSNSで定期的に浮上するのが、「ブラジル産鶏肉を食べると早熟になる」「発がん性がある薬品が残留している」といったセンセーショナルな言説です。消費者を不安に陥れるこれらの噂について、科学的知見と法規制の両面からファクトチェックを行います。
まず、「成長ホルモン剤が使われている」という噂は明確な事実誤認です。ブラジル農務省(MAPA)の法令(Normative Instruction No. 17)において、家禽類への肥育目的でのホルモン剤投与は厳格に禁止されています。これは国際食品規格委員会(Codex委員会)の基準にも合致しており、違反した生産者は輸出ライセンスの剥奪や重い刑事罰の対象となります。現代のブロイラーが40〜45日程度で急速に成長するのは、ホルモン剤の力ではなく、数十年にわたる品種改良と高度に計算された栄養配合飼料、温度・照明管理の賜物です。
次に、抗生物質の使用実態についてです。病気予防や治療のために抗菌剤が使用されるケースは世界共通で存在しますが、無秩序に投与されているわけではありません。ブラジル国内では出荷前の一定期間、薬の投与を断つ「休薬期間」が義務付けられており、生体内で薬剤が代謝・排出されてから出荷されます。さらに、日本に輸入される際には厚生労働省の検疫所によって残留農薬等ポジティブリスト制度に基づく厳しいモニタリング検査が実施されます。基準値を超える残留抗菌物質が検出されたロットは即座に廃棄または積み戻し処分となり、国内の流通網に乗ることはありません。
「発がん性の噂」についても、公的な毒性試験や疫学調査でブラジル産鶏肉の発がんリスクが国産より高いと結論づけた信頼できる学術データは存在しません。過去の不正事件や保存料に関する断片的な誤情報が、ネット上で伝言ゲームのように誇張され、「発がん性」という刺激的なキーワードと結びついて拡散されたものと判断できます。