現代の競泳において、スタートの瞬間に選手が最も神経をとがらせるのがフライング(不正スタート)に対する一発失格ルールです。
かつては陸上競技と同様に「1回目はやり直し、2回目のフライングから失格」という運用がなされていた時代もありましたが、競技進行のスムーズ化と意図的なスタート遅延を防ぐ目的から、現在は「1回でも号砲前に動けば即刻失格」という極めてシビアな規定が徹底されています。
判定の基準となるのが「完全な静止(Stationary)」です。「Take your marks」の合図がかかって構えた後、選手は号音「ピッ」が鳴るまで、全身の動作を完全に止めなければなりません。体重移動による重心の微細な揺れや、足の指先のわずかな動きであっても、スタート台に組み込まれた圧力センサーと高速カメラが検知した場合、不正スタートとみなされます。
スタート音より前に飛び出した場合はもちろんのこと、静止しきれずに体が前方へ崩れかけた状態で音が鳴った場合も失格の対象となるため、スターターが音を鳴らすまでの1秒から2秒前後の静寂には、凄まじい心理戦と身体制御が凝縮されています。