結論から述べると、「美容室」と「美容院」に法律上・業務上の違いは全くありません。どちらを屋号として掲げるかは、各サロンの経営者がブランディングや響きの好みに応じて自由に決定しています。
昭和32年に制定された「美容師法」の第2条第2項において、施術を行う施設は一律で「美容所(びようしょ)」と定義されています。行政への届出や保健所の開設検査においても、公的な書類上はすべて「美容所」として統一されており、法律の文面上に「美容室」や「美容院」という区分は登場しません。
では、なぜ2つの呼称が日常的に併存しているのでしょうか。その背景には、明治から昭和にかけての日本の医療・衛生機関の歴史が深く関係しています。明治期から大正期にかけて、髪結いやパーマネント技術の近代化に伴い、「病院」や「大学院」のように高い専門性と衛生管理を備えた施設であるという権威付けから「美容院」という呼び名が広く定着しました。
一方、昭和後期から平成のバブル期にかけて、よりスタイリッシュでプライベート感のある空間を志向する店舗が増加し、英語の「Room」やフランス語の「Salon」のニュアンスを取り入れた「美容室」という表記が急速に普及した経緯があります。現代のマーケティング観点では、レトロ感や落ち着きを演出したい場合は「美容院」、トレンド感やカジュアルさを出したい場合は「美容室」と名付けられる傾向が見られます。