猗窩座が刀を持たず、素手のみで戦う理由は、人間時代の恩師・慶蔵(けいぞう)から受け継いだ武術「素流(そりゅう)」にあります。病気の父のために盗みを重ね、罪人の刺青を入れられて荒んでいた狛治を救ったのが、慶蔵とその娘・恋雪でした。
慶蔵から人を守るための拳として素流を学んだ狛治は、大切な日常を守るために強くなろうと誓いました。しかし、祝言を間近に控えたある日、井戸へ毒を投げ込まれ、二人は命を奪われてしまいます。怒りと絶望に狂った狛治は、素手だけで敵対道場の門弟67名を殴殺。その惨状を聞きつけて現れた無惨の手によって、鬼へと変貌させられました。
守るべき者を守れなかった自責の念は、「弱者への憎悪」と「強さへの盲執」という歪んだ形で残り、素流の型は血鬼術「破壊殺」へと変貌を遂げました。彼の技の鋭さは、失われた温もりを取り戻そうともがく魂の叫びそのものだったと言えます。