インターネット上の掲示板やSNSでは、「アルメニアン・ダンスは後半の指が回ればなんとかなる」「派手なスピード勝負の曲」といった短絡的な言説が散見されます。しかし、これは作品の真価を見誤った大きな誤解です。
誤解の真相:スピード過多による音楽性の喪失
本作で多くの団体が陥る罠は、終盤「行け、行け」のテンポを上げすぎてアンサンブルが破綻し、リードが緻密に施した内声部の対位法や和声の色彩がすべてかき消されてしまう点にあります。リード自身も自著や講習会において、「テンポ・プレストは狂乱ではなく、明瞭さと統制されたエネルギーを意味する」と警鐘を鳴らしていました。
また、「民族音楽だから荒削りな勢いがあればよい」という考えも危険です。リードが意図したのは、泥臭い原曲のエネルギーを、シンフォニックな洗練された響きへと昇華させることでした。各声部のバランス、とりわけ旋律の裏で動く対旋律(カウンターライン)の歌い込みこそが、演奏の成否を分ける決定的な要素となります。