日本料理界の至宝であり、「みかわ是山居」の店主として知られる早乙女哲哉氏は、天ぷらの本質を「揚げることではなく、脱水と蒸しの同時進行である」と説く。高温の油の中で衣の水分を極限まで抜き去り、同時にその衣で素材を密閉して内部の水分で蒸し上げる。この完璧な熱の対流を生み出すために不可欠なのが、寸分の狂いもない温度コントロールだ。
名匠の手元には長年の経験に裏打ちされた直感が宿るが、家庭でその領域に迫るための最短ルートこそが計測機器の活用に他ならない。早乙女氏が追求する「軽やかで素材の香りが立ち上る天ぷら」を目指すなら、まずは鍋の中の温度変化を克明に観察し、油と素材の対話を始めるべきだ。