制作時間がわずか2時間だったとはいえ、『残酷な天使のテーゼ』の歌詞が持つ文学的深みは今なお多くの考察を生み出している。「少年よ 神話になれ」というあまりにも有名なフレーズをはじめ、全編に散りばめられた言葉の数々は、主人公・碇シンジの過酷な運命を予見していたかのようだ。
及川眠子は後年の対談で、「年上の女性(母親)の視点から、まだ何者でもない少年を見つめる眼差し」を意識して書いたと語っている。少年が痛みを抱えながら大人へと脱皮していく過程を、神話になぞらえて肯定する構造だ。
「テーゼ(定立・命題)」という哲学用語をタイトルに冠した知的な響きと、疾走感あふれるメロディに乗る母性的な叙情詩。このギャップと融合こそが、聴く者の心を掴んで離さない魔力となっている。