性的指向やジェンダー観をめぐる議論もまた、苛烈なキャンセル運動の標的となってきた。代表的な事例が、世界的大ヒット作『ハリー・ポッター』シリーズの著者であるJ・K・ローリングをめぐる論争だ。彼女がトランスジェンダーの権利と女性の権利の相克について自身の見解を表明した際、世界中のネットユーザーや一部のファン、さらには映画のキャスト陣からも激しい批判を浴びた。
この論争は単なるネット上の口論にとどまらず、作品そのものの不買運動へと発展。しかし、巨大IPを保持するワーナー・ブラザースや、新たな映像化を進めるHBOなどのメディア企業は、原作者の存在感と作品の商業的価値、そして批判リスクとの間で極めて繊細な判断を迫られ続けている。表現の自由の境界線と差別の定義をめぐる対立は、今なお決着を見ていない。