『鷺娘』は、卓越した舞踊技術と圧倒的なスタミナ、そして高度な表現力が要求されるため、歴代の最高峰の女方だけが本興行での主演を許されてきた大曲です。
現代において本作を不滅の金字塔へと押し上げたのが、人間国宝・五代目坂東玉三郎です。玉三郎が演じる『鷺娘』は、指先一本の震え、首のかしげ方、視線の落とし方に至るまで完璧に計算され尽くし、世界的な映画監督や芸術家たちをも驚嘆させました。特に雪の中で羽を震わせながら息絶えるラストシーンの壮絶な美しさは、古典舞踊の枠を超越した総合芸術として国内外で絶賛を浴びました。
現在では、中村七之助や尾上右近といった次代を担う花形俳優たちへとその芸が継承されています。演じる俳優によって、可憐さや艶やかさ、あるいは狂乱の迫力にそれぞれの個性が表れる点も、長年愛され続ける大きな要因です。