六道珍皇寺を語る上で欠かせない中心人物が、平安時代初期の実在の貴族・文人である小野篁(802〜852年)です。文武両道に秀で、遣唐使の副使に任じられるほどの天才肌でありながら、朝廷を批判して配流されるなど型破りな人物として知られていました。
そんな彼にまつわる最も有名な逸話が、「夜な夜な境内の井戸から冥界へ降り、閻魔大王の裁判補佐を行っていた」という伝説です。境内奥の庭園には、彼が冥土へ向かう際に飛び込んだとされる「冥土通いの井戸」が今も静かに口を開けています。
かつては「冥土へ行く井戸はあるが出口の井戸がない」とされていましたが、2011年に隣接地(旧境内地)から冥土からの帰路に使われたとされる「黄泉がえりの井戸(よみがえりのいど)」が発見・復元されました。行きと帰りのルートが揃ったことで、伝説は一段とリアリティを帯び、歴史ミステリーとしての奥深さを増しています。