一般にこの異名で親しまれる樹木の代表格は、モクセイ科の落葉高木「ヒトツバタゴ」だ。自生地が国内でも愛知、岐阜の木曽川流域と長崎県対馬という極めて限られた地域に孤立して分布しているため、かつてはめったに出会えない「幻の木」として珍重されてきた。
5月上旬から中旬にかけて、細く繊細な白い花弁が枝全体を隙間なく覆い尽くす。その様はまるで満開の桜の上に新雪が降り積もったかのようだ。見上げる人々が思わず息をのむような美しさでありながら、秋になれば黒紫色の実をつけ、冬には完全に葉を落とす。このダイナミックな季節の変容こそが、古くから人々の好奇心を刺激し続けてきた。
学名「Chionanthus retusa」は「雪の花」を意味する。欧米でも「Fringe tree(フリンジ・ツリー)」として知られるが、日本の都市部で街路樹や公園樹として植栽が進んだ背景には、排気ガスや病虫害に強く、整った樹形を保ちやすいという実用的な理由もあった。