出版シーンの底流には、長年培われてきた翻訳カルチャーの確固たる土壌がある。海外の情熱的なヒストリカルやサスペンスを紹介し続けてきた二見書房などの老舗レーベルは、良質なロマンス小説を求める固定読者を魅了し続けてきた。身分差や運命のいたずらに翻弄されながらも、最後には至上の愛に辿り着くという強固なカタルシスは、今も色褪せない。
これに対し、集英社をはじめとする大手総合出版社は、文芸とエンタメの垣根を取り払う先鋭的なレーベル展開を加速させている。単なる刺激物としての官能ではなく、キャリア、家族関係、エイジングといった同時代の女性が抱えるリアルな葛藤を主軸に据えた作品を次々と刊行。大人の読書欲を正面から満たす重厚な物語が、文芸ランキングの上位を賑わせるケースも珍しくない。